温暖化論のホンネ ~「脅威論」と「懐疑論」を超えて (tanQブックス)副題にあるように、地球温暖化に関する「脅威論」と「懐疑論」
を超えていくことを意図し、それに成功している画期的な本で
ある。
個人的には脅威論の主張に共感しつつも、それに対して違和感
を覚えていたが、この本を読むことですっきりと頭が整理され
た気持ちになった。
あとがきで江守正多が述べているように、武田邦彦が自らの問
題点を認め、メディアの温暖化報道や政府の政策にみられる単
純なメッセージへの対抗として、「環境問題はウソだ」という
ような単純なメッセージをぶつけていたと認めたことが、非常
に意義深いことのように思った。
しかし、これによって武田邦彦を否定してしまうこともまた間
違いである。
彼がなぜこうした単純なメッセージをぶつけることになったの
かもまた、考えていく必要がある。
武田邦彦の主張は本人が意図しているのだろうが、間違って消
費されてしまっているのではないだろうか。
武田邦彦の問題点と、ちまたで流通している温暖化論の両者の
問題点が本書によって浮き彫りになっていく。
また、本書を通して、武田邦彦、枝廣 淳子、江守正多の三氏の
意見の共通点と相違点が明確になって行き、読んでいてとても楽
しい。
意外なことに、思ったよりも共通点が多いことに気づくはずだ。
本書の中で実際に行っているように、読者もまた自分が「脅威論」
であれ、「懐疑論」であれ、別の立場の者の主張に耳を傾け、生
産的な議論をしていく必要があることが重要である。
たぶん、それが最も本書が伝えたかったことではないかと思う。
単純な「脅威論」と「懐疑論」はもうやめにしよう。
両者を消化して、次のステップへと進もう。
つけたすと、「これって武田邦彦イジメ??」というレビューが
あるが、武田邦彦vs枝廣 淳子、武田 邦彦vs江守正多というよう
な構図になっており、バランスを欠いていたことは確かである。
枝廣 淳子vs江守正多の議論もまた聞きたかった。
三者がかみ合った議論をするという点だけでも、非常に革新的な
ことであるので、ちょっと望みすぎかもしれないが、もう少し深
く議論してもらいたかったとも思う。
今後に期待。