恋 (新潮文庫) なるほど、「よく書けている」、「力作」である。しかし、それがどうよ? これを外国語、たとえば、英語やフランス語に翻訳し、世界に出せるか? 出したら、たんなる三文小説だろう。
どの登場人物も、「物語」を語るための「道具」でしかなく、生きている感じがしなかった。共感もできなかった。本作をミステリーとしている「秘密」……それが、最初から、引っ張っていくのであるが、オワリの方を先に読んでしまうと(笑)、なんだ?……である。そういう「秘密」は「ありふれている」し、「紋切り型」である……と、あえて言っておこう。
70年時代とその時代を生きた人々を題材にしたということであれば、藤原伊織の『テロリストのパラソル』の方が、文学としてリアリティがある。
だが、これだけの長さ(1000枚ぐらい?)を「うまくまとめた」のは、プロのお仕事でしょう(だから星3つ)。よかったね?。ただ、それだけ。
しかし、なにが「恋」なんかね??
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