賢い皮膚―思考する最大の“臓器” (ちくま新書) 賢い皮膚という本論に入る前の前置きが結構長いです。皮膚にまつわるいろいろな話も面白いですけど。
そして、本論ですが、
表皮細胞と神経細胞はともに外胚葉から生じるが、表皮はバリアー機能に、神経は情報伝達機能に特化していると考えられてきた。筆者は破壊された表皮のバリアー機能の修復が、表皮から蒸散する水分量をモニターしながら行われることに着目し、何らかの情報処理が行われていると考えるに至った。そういう視点から調べてみると表皮細胞は神経細胞と同様、さまざまは神経伝達物質やホルモンなどを作ることができ、さらにそれらの受容体も完備していることがわかった。ただ、表皮細胞どうしの情報伝達には、神経細胞とは違ったしくみが必要であり、筆者は、それが表皮組織に存在するカルシウムイオンの濃度勾配や表皮細胞内のカルシウムイオン濃度の周期的変動を、細胞が察知することで行われているのではないかと推論している。
皮膚は脳の2倍強の重さをもつ最大の臓器であり、この皮膚が何らかの情報処理能力を持つとすると、それが心身に与える影響は大きいだろう。皮膚が心身に与える影響がわかってくれば、鍼灸など、皮膚に刺激を与える医療の理解もより深まるだろうし、アトピー性皮膚炎とうつ病の相関などにも新しい説明が加わるかもしれない。
肌の美しさが美人の条件の筆頭にくるのが、頷けますね。皮の重要性をこんなにアピールされると「美人は皮一枚」だなんて、言っていられなくなるわけだから。私たちは心身の状態を映し出す皮膚の主張に謙虚に耳を傾け、健やかな皮膚を保つ努力をするべきなのだと思いました。
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